2012年3月23日金曜日

映画バカ黙示録: 洋画 マ行アーカイブ


『メリーポピンズ』(1964) MARY POPPINS 140分

監督:ロバート・スティーヴンソン 製作:ウォルト・ディズニー、ビル・ウォルシュ 原作:パメラ・L・トラヴァース 脚本:ビル・ウォルシュ、ドン・ダグラディ 撮影:エドワード・コールマン 作曲:アーウィン・コスタル 音楽:ロバート・B・シャーマン、リチャード・M・シャーマン
出演:ジュリー・アンドリュース、ディック・ヴァン・ダイク、デヴィッド・トムリンソン、グリニス・ジョンズ、ハーマイアニ・バドリー

久々に観た『メリー・ポピンズ』だが、こいつはディズニー実写映画のベスト作品だと思う。
『チム・チム・チェリー』や『一さじのお砂糖』そして『スーパーカリフラジリスティックエクスピアリドーシャス』など名曲で彩られた愉快なミュージカル映画だ。


どんな夢が来るかもしれない

時と場所は1910年代の古き良きロンドン。建物の上には煙突が立ち並び道には馬車が走っている、そんな時代の話だ。
銀行で働くバンクス氏には女の子と男の子の姉弟である二人の子供がいる。その子供たちがわんぱくで今日も乳母(字幕では乳母となっているがむしろ住み込みの家庭教師といったところ)が「もうやってられません」と辞めて出て行ってしまう。
子供たちは「明るくて優しい乳母を捜しています」という募集広告を作ってバンクス氏に見せる。ところがバンクス氏はそれを破って暖炉にくべてしまい、自分で文を書いた「厳格でしっかりした乳母を求める」という募集広告を新聞に出す。そんな時、風が東の風に変わり、その風に乗ってコウモリ傘を差した一人の女性が空から舞い降りてくる。メリー・ポピンズと名乗るその女性は募集広告を手にバンクス家を訪れる。だが、彼女が差し出したその募集広告はバンクス氏が昨夜確かに破って捨てたはずの子供たちの書いた物だった。どうにも不思議なこの女性は乳母として採用され、そして奇妙で楽しい出来事が次々と始まるのであった。


"気持ちはあなたが彼女を保持する必要があります死んだ"

映画の随所にディズニーらしい特撮が使われている。
メリー・ポピンズが風に乗って舞い降りてくるシーンはジュリー・アンドリュースをケーブルで吊った合成無しのフライング効果によるもの。ワイヤーがかすかに判別できるがそんなことよりもふわりふわりと浮き沈みする風の流れを感じさせてくれる優れた効果だ。ジュリー・アンドリュースはにこやかな笑顔を浮かべているが実際にはかなり苦しい撮影だったはず。
大道芸人・煙突掃除人のディック・ヴァン・ダイクが描いた絵の中にみんなで入り込むシーンでは実写の人物がアニメの背景と合成され、ペンギンやキツネなどアニメのキャラクターと触れ合い一騒動になる。
メリー・ポピンズが鏡の中の自分とデュエットするシーンなど合成も多用されている。
1964年という製作年度から考えるとかなり高度な技術だったことが分かるが、それよりもそのシーンをどうやって面白い物にするか、原作や脚本にあるイメージをいかに魅力的な映像化するかに工夫が施されているところが重要だ。


geuss人

もちろん『ミュージカル映画』としてもにぎやかかつ愉快だ。
ジュリー・アンドリュースはブロードウェイの舞台ミュージカルだった舞台版『マイ・フェア・レディ』で主演をつとめ上げていた人なので歌はもちろん上手い。顔は美人と可愛いの中間ぐらいでなかなか好み(わたしの好みはどうでもいいか)。今回調べてみたところこの『メリー・ポピンズ』が映画デビュー作だが新人とは思えぬ堂々たる主演ぶりで、さすがブロードウェイで鍛えられた人は違う。唯一の欠点といえば夫が映画監督のブレイク・エドワーズということぐらいか。いや、『ピンク・パンサー』シリーズなどのファンには悪いんだが、わたしはブレイク・エドワーズって嫌いなんだ。どうにも野暮ったくって。1981年に『S.O.B.』(日本未公開・ビデオリリースのみ)なんてのをジュリー・アンドリュース主演で監督してい� ��が、これがもうひどくて・・・ジュリー・アンドリュースも夫が監督・製作なんでしょうがなく出演したんだろうなぁ。


バンクス氏の近所には元英国海軍の提督が船型の家を建てて住んでいる。その屋根にマストや操舵輪を据えているのはまだしも、大砲まで設置してあり毎日定刻になると部下に命じて時報として空砲をぶっ放す。すると近所の家にはその轟音と衝撃で揺れ動き家具が動いたり花瓶が落ちたりするのだが、隣人もそこら辺は心得た物でちゃんと落ちては困る物のそばで控えてドッカーンとくるとタンスを押さえたりつま先でコップを受け止めたりする。実はここが一番好きなシーンだったりする。次は煙突掃除人集団のダンスだろうか。

笑い出すと宙に浮かんでしまうおじさんというのが出てきて、そこを訪れたメリー・ポピンズと子供たちまでついには笑って浮かびだしそのままお茶の時間になるというシーンがある。ここがどうもよく分からないのだがイギリスには「あんまり笑ってると空に飛んじゃうぞ」とかいう笑うのを戒めることわざがあるのだろうか。
そういえば「スミスという名の義足の男」のギャグも日本語に翻訳するとほとんどギャグになっていない。


映画のタイトルは『メリー・ポピンズ』だが原作の翻訳本だと『メアリー・ポピンズ』となっている。これはやはりMARYの発音がイギリス式とアメリカ式で違ったりするのだろうか。わたしは子供の頃に本の『メアリー・ポピンズ』を読んでいたのでどうも『メリー・ポピンズ』という呼び方には違和感があってしょうがない。
そうそう、ディック・ヴァン・ダイクは実は二役をこなしている。大道芸人・煙突掃除人以外のさて誰を演じているでしょうか?



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